「嬢王」シリーズ徹底解剖

基本情報

ドラマ「嬢王」は、倉科遼原作、紅林直作画による同名の漫画を原作としたテレビドラマシリーズです。
夜の世界を舞台に、キャバクラ嬢たちが頂点を目指して繰り広げる熾烈な争いや人間模様を描いています。

2005年10月から12月にかけてテレビ東京系の「ドラマ24」枠の第1弾として放送され、好評を博したことから第2弾、第3弾も制作されました。

原作漫画について

倉科遼氏原作、紅林直氏作画による漫画『嬢王』は、2004年から2008年にかけて集英社の『ビジネスジャンプ』で連載された、夜の世界を舞台にした作品です。
平凡な女子大生が、キャバクラ嬢の頂点「嬢王」を目指して奮闘し、成長していく姿を描き、大きな人気を博しました。

『嬢王』

何不自由なく大学生活を送っていた主人公・藤崎彩（ふじさき あや）。
しかしある日、父親の会社が倒産し、1億5千万円もの莫大な借金を背負ってしまう。
途方に暮れる彩の耳に入ってきたのは、年間No.1のキャバクラ嬢に優勝賞金1億円が与えられるグランプリ「嬢王（じょうおう）」の存在だった。
一大決心をし、夜の世界へ身を投じた彩が、様々なライバルたちとの熾烈な争いや策略、そして人間模様の中で、六本木の頂点「嬢王」を目指していく物語です。

『嬢王 Virgin』

不況に喘ぐ六本木の夜の街を活性化させるため、新たな「嬢王グランプリ」の開催が決定。
今回の参加資格は「平成生まれの女性限定」、優勝賞金は3億円という、まさに水商売の世界を知らない素人（ヴァージン）たちがしのぎを削る過酷な大会だった。
主人公の杏藤舞（あんどう まい）は、「自分を変えたい」という一心で、未知の世界であるキャバクラ嬢の戦いに飛び込んでいく。

上述の漫画作品をベースに実写ドラマ化されたものが『嬢王シリーズ』です。

第1作は、テレビ東京系の深夜ドラマ枠「ドラマ24」の第1弾作品として、2005年10月7日から12月23日まで全12回にわたり放送されました。
この作品が好評を博したことからシリーズ化され、続編として第2弾、第3弾も同枠で放送される人気作となりました。

本シリーズの大きな特徴は、主人公のライバルであるキャバ嬢役の女優陣がヌードを披露する大胆な演出にあります。
放送当時、深夜帯においても女性のヌードは放送コード上タブー視されつつある風潮でしたが、そうした中で果敢に攻めた作風が大きな話題を呼びました。
ほぼ毎回ヌードシーンが盛り込まれたことがシリーズ最大のセールスポイントとなり、人気を確立した要因と言えるでしょう。

ヌードシーンを担当したのは、主に各シリーズの放送当時に人気を博していたAV女優たちです。

・第1シリーズ： 蒼井そら、吉沢明歩、飯沢もも など
・第2シリーズ： 原紗央莉、麻美ゆま、朝日奈あかり、横山美雪 など
・第3シリーズ： 明日花キララ、羽田あい、原紗央莉、星野あかり など

主演は北川弘美や原幹恵といった、当時新進気鋭の若手女優が務めましたが、彼女たちが劇中でヌードを披露することはありません。
また、過去に映画や写真集などでヘアヌードを披露した経験のある麻丘実希、かでなれおん、神楽坂恵といった女優も出演していますが、同様にヌードシーンはなく、「ヌードを披露する役はAV女優が担う」という明確な役割分担がなされていました。

『嬢王』シリーズのドラマとしての質を問われると、正直なところ評価に困ってしまいます。
まずヌード描写のクオリティは特筆すべき点です。
地上波の放送コードの限界に挑み、美しさと過激さを両立させた演出は高く評価できます。
しかし裏を返せば、それ以外の脚本や演技といった要素が「ヌードがなければ作品として成立しない」と言えるほど物足りなかったのも事実です。

その一因は、深夜ドラマゆえの低予算にあったと推測されます。
演技に深みを与えられる経験豊富な俳優が不在の中、原作ありきの複雑なストーリー展開で視聴者を引き込むのは、やはり厳しかったように思われます。

原作は、夜の世界で頂点を目指す女性たちの野心・嫉妬・そして友情が渦巻く重厚な人間ドラマを描き切っています。
テレビドラマ版もまたこの原作のシリアスなストーリーラインを忠実に再現しようと試みました。
しかし、経験豊富な役者の不在という現実が立ちはだかります。
主演には新進気鋭の若手女優を、そして物語の鍵を握るライバル役には現役のAV女優を起用するという座組は、話題性やヌードというセールスポイントを生み出す上では極めて効果的だったかもしれません…。
しかし原作が求める複雑な心理描写や、セリフの裏に隠された駆け引きを表現するには、役者陣の経験値が圧倒的に不足していました。
シリアスな物語であるほど、登場人物の微細な表情や声色の変化といった演技の抑揚が、視聴者を惹きつけるうえで不可欠となります。
しかし『嬢王』は、その最も重要な部分を役者の力量に委ねることができず、結果として物語はどこか表層的で、ダイジェストのような印象を視聴者に与えてしまいました。
ドラマ性を追求しようとしたが故に、かえってドラマとしての深みを失ってしまった…とすら表現できてしまいます…。

特命係長 只野仁

この『嬢王』のジレンマを鮮やかに映し出すのが、同時期に絶大な人気を誇った『特命係長 只野仁』シリーズです。
同じくヌードを多用しながらも、『只野仁』は『嬢王』とは全く逆の戦略を取りました。

それは、「ストーリー性の徹底的な排除」と「エンタメへの特化」です。
『只野仁』は、複雑な伏線やシリアスな人間ドラマを潔く捨て去り、「昼はうだつの上がらないサラリーマン、夜は特命係長」という明快なヒーロー活劇に徹しました。
そしてお色気やヌードシーンを、シリアスな見せ場としてではなく、むしろ「笑いの要素の一部」として巧みに組み込んだのです。
視聴者は罪悪感なく楽しめる「深夜のくだらないお楽しみ」として作品を受け入れることができました。

これは低予算が前提の深夜番組という制約を逆手に取った、見事な「割り切り」の勝利でした。
『嬢王』がシリアスなドラマとヌードの両立に苦しんだのに対し、『只野仁』はすべてをギャグとユーモアのるつぼに放り込むことで、唯一無二のエンターテイメントを成立させたのです。

商業的な成功という点でも、両者の差は視聴率に明確に表れています。

• 『嬢王』シリーズ平均視聴率
  第1作：5.8％ → 第2作：4.9％ → 第3作：4.0％
• 『特命係長 只野仁』シリーズ平均視聴率
  第1作：12.0％ → 第2作：14.1％ → 第3作：14.3％

時間帯が異なる故、単純比較は出来ませんが『只野仁』がダブルスコア以上の差をつけ、シリーズごとに数字を伸ばしたのに対し、『嬢王』は回を追うごとに視聴率を落とす結果となりました。
『只野仁』がスペシャルドラマや劇場版、後年のネット配信まで続く人気シリーズとなったことからも、その勢いの違いは明らかです。

だからといって『嬢王』が決して失敗作だったわけではありません。
「ドラマ24」枠で『勇者ヨシヒコ』『マジすか学園』シリーズなどと並び3シリーズも制作されたという事実は、続編を望む確固たる需要と熱烈なファンが存在した何よりの証拠です。
そして、ヌードを「丁寧にかつ美しく見せる」という点においては、『只野仁』と比較しても遜色なく、むしろ勝っていた部分もあったと評価できるでしょう。

全裸監督

時代は下り、もし『嬢王』が現代の動画配信プラットフォームでリメイクされたらどうなるでしょうか。
その可能性を示唆するのが、Netflixが生み出した『全裸監督』です。
もちろん放送コードの制約がなく、映画並みの潤沢な予算をかけられるNetflixと地上波深夜ドラマを単純比較するのはナンセンスです。
しかし学ぶべき点は「ヌードの位置づけ」にあります、『全裸監督』においてヌードは、単なる客寄せのサービスシーンではありません。
それは昭和という時代の「熱量」そのものであり、村西とおるという人間の狂気的な生き様を描く上で不可欠な「主題」でした。
作品全体の圧倒的な熱量がヌードを芸術の域にまで高め、視聴者を単なる見世物ではない重厚な人間ドラマへと引き込んだのです。

もし『嬢王』がNetflixでリメイクされたなら？この問いは『嬢王』が抱えていた本質的な課題を浮き彫りにします。
もし潤沢な予算と表現の自由が許されるならば、『嬢王』は原作の持つポテンシャルを最大限に引き出し、全く新しい傑作として生まれ変わるかもしれません。
実力派の俳優陣が、夜の世界に生きる女性たちの業や葛藤をリアルに演じ、ヌードは彼女たちの生き様を表現する痛々しくも美しい手段として描かれる…。
それは『全裸監督』に匹敵するような、見応えのある社会派ドラマになる可能性すら秘めています。

結局のところ、テレビドラマ版『嬢王』は、「シリアスな原作」と「深夜ドラマの制約」というミスマッチが生んだ、志半ばの挑戦だったのかもしれません。
しかしその不器用なまでのひたむきさが、カルト的な人気を呼び、今なお語り継がれる理由なのでしょう。

第1シリーズ　嬢王

ヌードシーン集

   

👉 詳細はコチラ

第2シリーズ　嬢王 Virgin

ヌードシーン集

   

👉 詳細はコチラ

第3シリーズ　嬢王3 〜Special Edition〜

ヌードシーン集

   

👉 詳細はコチラ

まとめ

本シリーズは、大胆不敵なまでのすっぽんぽんの美女たちの性描写と、日本の深夜ドラマ史に鮮烈な足跡を刻みました。

単に「お色気ドラマ」という一言で片付けてしまうには惜しいストーリー性が内包しているにも関わらず、ヌード描写ばかりに目が行ってしまい、真っ当な評価に繋がらなかった点は惜しいとしか言わざるを得ません。
それもそれだけ女性のすっぽんぽんが、どんなモノより強力なパワーコンテンツだということを証明したに過ぎないのかもしれませんね。。。

当時のテレビ表現の限界に果敢に挑戦し続けたという姿勢は本当に評価できます。
2000年代に入ってから、既にテレビはオワコンと言われる風潮は強まってしまいましたが、戦い方次第でいくらでも魅せる作品を輩出できるという証明をしてくれました。

「嬢王」シリーズが示したような、特定のニッチなテーマに深く切り込み極めて大胆な表現に特化したドラマは、Netflixに代表されるような配信プラットフォームの多様化と、表現の自由度に対する社会的な許容範囲の変化に伴い、今後も様々な形で登場し続ける可能性があります。
その際に「嬢王」が切り開き問題提起した、表現のあり方は、後続の作品にとって重要な影響を及ぼした、と言って良いのではないでしょうか。
夜の世界を描いたドラマは形を変えながらも、私たちのエンターテイメント体験の中で、刺激的な位置を占め続けることでしょう。
強烈に面白く刺激的な、ヌードを厭わない歓楽業界を描き切った傑作に出会うその日を信じ、本日は「嬢王」を堪能してください。