プロジェクト概要

昭和、平成を駆け抜け、令和の時代に蘇った伝説の成人映画レーベル「日活ロマンポルノ」。
誕生から50周年を迎えたこの映画遺産は、単なる懐古趣味的な復活にとどまりません。
2016年の45周年記念企画「ロマンポルノ・リブート」プロジェクトによる衝撃的な復活劇を経て、現在その系譜は「ROMAN PORNO NOW(ロマンポルノ・ナウ)」へと進化を遂げました。
かつての黄金律であった「10分に1回の濡れ場」「約80分の上映時間」という制作ルールを、現代の気鋭監督たちが“クリエイティブのための制約として再解釈した、プロジェクトの全容と、映画ファンを魅了してやまない「ヌード描写」の進化と真価に迫ります。
「ROMAN PORNO NOW」とは…?
「ROMAN PORNO NOW」は、日活ロマンポルノ50周年を記念して2021年に始動した製作プロジェクトです。
そのコンセプトは、半世紀にわたり継承されてきた「女性の強さや美しさ、愛の多様性」というスピリットを現代の視点でアップデートすることにあります。
本プロジェクトでは作家性の強い3名の監督が招聘され、それぞれの個性が爆発した新作3本が製作されました。
沿革

日活ロマンポルノの歴史は、日本映画の挑戦の歴史でもあり、その歩みは大きく3つのフェーズに分けることができます。
せっかくなので、「ROMAN PORNO NOW」の以前の系譜も紐解いていきましょう。
【黄金期】日活ロマンポルノ(1971年〜1988年)
映画産業の斜陽期であった1971年に日活は成人映画製作へ捕獲的に転換します。
「10分に1回の絡み、上映時間70〜80分前後、低予算」という厳格なルールの下、若手監督たちに自由な表現の場が与えられました。
この「制約の中の自由」が、根岸吉太郎、森田芳光、周防正行、金子修介といった巨匠たちを輩出します。
17年間で約1,100本を生み出し、社会現象を巻き起こしました。
【復活】ロマンポルノ・リブート(2016年)

製作終了から28年後、45周年を記念して立ち上がったのが「ロマンポルノ・リブート」です。
園子温、行定勲、中田秀夫ら現代日本映画界を牽引するトップランナーたちが集結しました。
「かつてのルールで現代の映画を作ったらどうなるか?」という問いかけは大きな話題を呼び、ロマンポルノが過去の遺産ではなく現在進行形の表現手法であることを証明しました。
【進化】ROMAN PORNO NOW(2021年〜)
「リブート」の成功を受け、50周年で始動したのが本作「ROMAN PORNO NOW」です。
リブートがお祭り的な「復活」であったのに対し、NOWはより現代社会の空気感に寄り添い、多様な生き方やジェンダー観を反映させた「深化」のフェーズと言えます。
評価
「リブート」から「NOW」へと続く流れの中で特筆すべきはシリーズの代名詞である「ヌードシーン」への評価が、さらに芸術的かつ本質的なものへと昇華されている点です。
魂の解放としての「脱衣」を魅せた 本プロジェクトにおける濡れ場は、最早サービスカットなどで括れるものではなくなってきました。
登場人物が社会的な鎧を脱ぎ捨て、魂を解放するための必然的な儀式として描かれています。
例えば『手』では、主人公がコンプレックスから解き放たれる瞬間を、『愛してる!』では、痛みを共有することでしか繋がれない不器用な愛を、それぞれ肉体を通して表現しています。
これらは物語の核心に迫るために不可欠なシーンであり、だからこそ観る者の心を強く揺さぶることができます。
現代的な「美」と女性客の支持 かつて男性客主体だったロマンポルノですが「リブート」以降、その客層は大きく変化しました。
特に『百合の雨音』のような陰影を活かした彫刻のように美しいラブシーンは、女性客からも「美しい」「共感できる」と高い支持を獲得しました。
現代の撮影現場ではインティマシー・コーディネーターの導入など制作環境もアップデートされており、演者が安心して感情を爆発させられる環境が結果として緊張感と美しさを兼ね備えた名シーンの数々を生み出しています。
手

| 作品名 | 手 |
| 公開日 | 2022年9月16日 |
| 監督 | 松居大悟 |
| 出演 | 福永朱梨、金子大地、津田寛治、大渕夏子、金田明夫 |
| 概要 | 山崎ナオコーラの小説を原作に、老いた男性の手写真集という「フェティシズム」を通して、現代女性の孤独とささやかな救いをユーモラスかつ繊細に描写。 |
愛してる!

| 作品名 | 愛してる! |
| 公開日 | 2022年9月30日 |
| 監督 | 白石晃士 |
| 出演 | 川瀬知佐子、鳥之海凪紗、乙葉あい、ryuchell、高嶋政宏、根矢涼香、今成夢人、山口森広、大迫茂生、木村圭作、福田もか。、鈴木太一、蒼月流 |
| 概要 | ホラー界の鬼才がSMの世界に挑んだ意欲作、フェイクドキュメンタリーの手法を用い、過激なプレイの中にある魂の触れ合いを描く。 |
百合の雨音

| 作品名 | 百合の雨音 |
| 公開日 | 2022年10月14日 |
| 監督 | 金子修介 |
| 出演 | 小宮一葉、花澄、百合沙、行平あい佳、大宮二郎、宮崎吐夢、星野花菜里、宝保里実、細井じゅん |
| 概要 | ロマンポルノ出身の巨匠が、過去のトラウマを抱える女性たちのシスターフッド(女性同士の連帯)と恋愛を、圧倒的な映像美で綴る。 |
今後の展望・まとめ
「リブート」で再点火し、「NOW」で現代的なアップデートを遂げた日活ロマンポルノ…。
その作品群は、ヴェネツィア国際映画祭でのクラシック部門選出(㊙色情めす市場)など世界的再評価とも呼応し、新たなファン層を開拓し続けています。
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㊙色情めす市場 - 1974年
大阪の旧赤線地帯。売春防止法施行から20年、19歳の娼婦トメと40歳を過ぎてなお現役の母よねは、知的障がいのある弟を抱え体を売って生きていた。客を取り合う過酷な現実や母の妊娠などの苦難を通じ、底辺で生きる女性の悲哀とたくましさを、田中登監督が鋭く描いた問題作。
「10分に1回の濡れ場」というかつての商業的なルールは、今や人間の本性を暴き出し、映画作家の腕を試すための高潔な「制約」となりました。
映画としての純粋な面白さと、大人の鑑賞に堪えうる上質な官能…、この2つを両立させた「ROMAN PORNO NOW」は多様な愛の形が叫ばれる令和の時代だからこそ必要な、映画体験の原点回帰と言えるでしょう。
半世紀の時を超え日活ロマンポルノは今なお、最も過激で、最も純粋な「愛の実験場」であり続けています。








