「花と蛇」について

「花と蛇」は、作家・団鬼六によって書かれ、半世紀以上にわたって影響を与え続けているSM小説の代表作です。
この物語は、もともと団鬼六が『奇譚クラブ』という雑誌に投稿した作品でした。
読者から絶大な人気を得て、8年にもわたる長期連載となりました。
興味深いことに作者の団鬼六自身にSMの趣味はなく、あくまで読者を惹きつけるための強力な物語の「装置」としてSMというテーマを選んだと言われています。
彼は一つのジャンルを築き上げた人物でした。
関連商品
花と蛇 完結10巻セット - 2016/01/30
財界・社交界で有名な絶世の美女・静子が、義理の娘とともにズベ公グループに誘拐された。
そこで彼女を待っていたのは屈辱的な調教の数々だった……。
執拗な秘所責め、親娘緊縛ショー、奈落の底に落ちた静子は、絶望とは裏腹に被虐の快楽に目覚め、妖艶さを増していく。
官能大河小説『花と蛇』シリーズ10巻分を1冊にまとめた、電子書籍限定豪華完結セット。
原作の内容
物語のあらすじは非常にシンプルです。
上流階級の美しく気品のある夫人・静子が、ある日突然誘拐され、想像を絶する辱めを受けるというものです。
この作品の大きな特徴は「花」と「蛇」という象徴的な対比にあります。
- 花:主人公の静子のこと。美しさ、気品、高い社会的地位の象徴です。
- 蛇:静かを辱める犯人たちや暴力、縄など。社会の裏側に潜む、原始的で混沌とした欲望を象徴しています。
物語では上品で美しい「花」のような存在が、野蛮な「蛇」によって徹底的に貶められていく過程が執拗に描かれます。
作品の評価
この小説はただ過激なだけでなく、その単純で分かりやすい展開が人々を惹きつけた力の源泉でした。
物語の核心は、誘拐そのものではなく社会的地位や気品、純潔といった価値が暴力によって破壊されていく過程にあります。
身分の高い主人公が無残に堕ちていく姿が強烈な意味を持ち、読者に衝撃を与えました。
「花と蛇」は、伝統的な価値観が揺らぎ始めた戦後日本の社会的な不安を映し出した物語として評価されています。
「花と蛇」は、その人気から何度も実写映画化されています。
時代ごとに特徴があり、大きく分けて「日活」時代と、2000年代以降の「東映」時代に分けられます。
日活による実写映像化作品
1970年代、経営難だった映画会社の日活は、「ロマンポルノ」という成人映画路線をスタートさせました。
この流れの中で、最初の「花と蛇」が誕生します。
1974年版『花と蛇』 監督は小沼勝、主演は谷ナオミが務めました。
原作の誘拐という設定とは異なり、映画では夫が妻の不感症を「治療」するため、部下に妻の「調教」を依頼するという心理的な裏切りの物語になっています。
主演の谷ナオミが見せた、恐怖や屈辱から快感へと変化していく複雑な演技は非常に高く評価され、この作品の象徴となりました。
シリーズ化とフランチャイズ化 第1作のヒットを受け、『花と蛇 地獄篇』(1985年)などの続編が作られました。
物語や主演女優は作品ごとに変わりますが「身分の高い貴婦人が辱めを受け、性に目覚めていく」という基本的な物語の型がここで確立されました。
花と蛇(日活版)
| 作品名 | 花と蛇 |
| 公開日 | 1974年6月22日 |
| 監督 | 小沼勝 |
| 出演 | 谷ナオミ、坂本長利、石津康彦、藤ひろ子、あべ聖、八代康二、高橋明、ウイリー・ドーシー |
花と蛇 地獄篇
花と蛇 飼育篇
| 作品名 | 花と蛇 飼育篇 |
| 公開日 | 1986年3月8日 |
| 監督 | 西村昭五郎 |
| 出演 | 小川美那子、永井秀明、港雄一、舵川まり子、矢生有里、坂元貞美 |
花と蛇 白衣縄奴隷
花と蛇 究極縄調教
| 作品名 | 花と蛇 究極縄調教 |
| 公開日 | 1987年12月5日 |
| 監督 | 西村昭五郎 |
| 出演 | 長坂しほり、速水舞、水木薫、中原潤、新海丈夫 |
東映による実写映像化作品
2000年代に入ると、東映によって新たな「花と蛇」シリーズが作られます。
日活時代とは異なる、洗練された映像美が特徴です。
2004年版『花と蛇』 監督に石井隆、主演に杉本彩を迎え、新時代の「花と蛇」としてリブートされました。
杉本彩の体当たりの演技が大きな話題となり、大ヒットを記録しました。SMシーンは、より様式化された「エロティック・アート」として美しく描かれています。
シリーズの拡大 その後も『花と蛇2 パリ/静子』や『花と蛇 ZERO』など、主演や監督を変えながら続編が製作されました。
舞台を海外に移したり、複数のヒロインを登場させたりと、新しい試みも行われています。
花と蛇(東映版)

花と蛇2 パリ/静子

花と蛇3

花と蛇ZERO

まとめ
「花と蛇」シリーズは、「女性の心情の変化を巧みに描いた芸術作品」としても高く評価されており、観る人によって様々な感想を抱かせる奥深い作品です。
このシリーズの評価点は、緊縛を単なる暴力的なものではなく、息をのむほど美しい「女体と縄の芸術」として描き出している点にあります。
特に東映版の作品では世界的に有名なプロの緊縛師が参加し、その卓越した技術によって、作品に様式美と格調高い雰囲気を与えています。
団鬼六氏の原作小説から始まったこの物語は50年以上にわたって何度も映像化され、ゲームやアニメにまでなりました。
これはシリーズの根底にあるテーマが、時代を超えて人々を魅了する普遍的な力を持っていることの証明と言えるでしょう。
結論として「花と蛇」シリーズの真の素晴らしさは、タブー視されがちなテーマを監督や俳優、緊縛師といったプロフェッショナルたちの力によって芸術の域にまで高めている点にあります。
人間の欲望や屈辱といった感情を、恐ろしいほどに美しいスペクタクルとして描き出す、この比類なき表現力こそが「花と蛇」を日本映画史に残る伝説的な作品にしているのでしょう。
東映版については各記事をご参照ください、日活版についてはいずれ記事の執筆を予定しておりますが、FANZA月額動画での視聴も可能です。
気になる方はそちらでご確認ください。











