若手監督の登竜門『青春Hシリーズ』全42作・徹底解剖

シリーズ情報

2010年代初頭の日本インディペンデント映画界に、彗星のごとく現れては消えていった特異な映画レーベルがあります。
それが2010年から2014年にかけて42作もの作品を世に送り出した、青春Hシリーズです。

『ピラニア』 - 白井みなみ

このシリーズの核となるコンセプトは、ただ一つ。
「『青春』と『H』をテーマに据えれば、何でもOK」。
この極めてシンプルな制約のもと、監督の作家性を最大限に尊重するという革新的な方針が貫かれました。
その結果、若者の性愛や葛藤を共通項としながらも、コメディ、ホラー、SF、フェイクドキュメンタリーに至るまで、多種多様なジャンルの作品群が誕生しました。
ピンク映画界で名を馳せたベテランから、才能あふれる若手監督までが交錯する、まさにインディーズ映画の「るつぼ」と呼ぶにふさわしいプラットフォームとなりました。

しかし、その創造的な輝きの裏側には、1本あたり50万円から100万円という超低予算製作という厳しい現実が存在します。
若手才能の登竜門として機能した「光」の側面と、時に「やりがい搾取」とも指摘される経済的困窮という「影」の側面、この両義性こそが『青春H』シリーズの本質を物語っています。

大手商業映画では決して扱えない過激なテーマに挑み、実験精神に満ちた作品群は、一部でカルト的な人気を獲得します。
ポレポレ東中野でのレイトショーを拠点に、熱狂的なファンを生み出しました。
特に「H」のテーマを深く理解した監督たちの手による作品では、複数の女優がヘアヌードを披露するなど、極めて刺激的な描写も含まれています。

『Ring My Bell』 - 月城まおら

本項では、この伝説的なシリーズ全42作に込められた「エロス」の輝きと葛藤を、特にヌードシーンに焦点を当てて公開順に紐解いていきます。

Making of Love

作品名	Making of Love
公開日	2010年8月28日
監督	古澤健
ヌード女優	藤代さや
ヘアヌード	〇

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ゴーストキス

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狼の時代

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Date・・・

作品名	Date・・・
公開日	2010年10月30日
監督	藤原健一
ヌード女優	杉崎歩美
ヘアヌード	〇

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カレーのにおい

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ピラニア

作品名	ピラニア
公開日	2010年12月18日
監督	井土紀州
ヌード女優	白井みなみ
ヘアヌード	〇

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イチジクコバチ

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再会

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Ring My Bell

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終わってる

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超・悪人

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若きロッテちゃんの悩み

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絵のない夢

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ソーローなんてくだらない

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花つみ

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半分処女とゼロ男

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Wild Flower

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エレナー電気工業

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ぱぴぃオールドマン

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狼の生活

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先生、おなか痛いです

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鳥を見て!

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ふたりのシーズン

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ふきだまりの女

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イヤリング

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青二才

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星の長い一日

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BADコミュニケーション

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Sweet Sickness

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実芭蕉 バナナ

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できる子の証明

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スターティング・オーヴァー

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ボン脳即菩薩

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激写! カジレナ熱愛中!

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あるひもりのなか

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川下さんは何度もやってくる

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恋のプロトタイプ

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愛こそはすべて 〜All You Need Is Love〜

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まとめ

本シリーズは全作品にヌードシーンが含まれ、そして確認できる限り実に3本に1本という高い割合でヘアヌードが描かれていました。

しかし、「H」を冠したシリーズとして、そのヌード描写が常に期待に応えるものだったかと問われれば、残念ながら首を縦に振ることはできません。
特にシリーズ後期に見られた迷走と失速感の原因はどこにあったのでしょうか。

ひとつは、監督の「作家性を尊重する」という崇高なコンセプトが、時として観客の求める「エロス」から乖離してしまった点にあるでしょう。
「エロ映画で終わらせたくない」という作り手の矜持が、「ストーリー重視」「強いメッセージ性」へと過度に傾斜し、肝心のヌード描写がおざなりになる、そんな本末転倒な作品が散見されたのは事実です。

もう一つは、4年間で42作という超低予算・ハイペースな製作体制そのものが、創造的エネルギーの「燃え尽き」を招いた可能性です。
シリーズ初期の作品が放っていた危険な熱量は、後半になるにつれて明らかに減退し、惰性で制作されているかのような印象を受ける作品も少なくありませんでした。

何より皮肉なのは、このシリーズが若手監督の「登竜門」としては確かに機能した一方で、体当たりのヌードを披露した女優たちが、その後大きくブレイクした例はほとんどないという事実です。
これは才能ある彼女たちが、シリーズの延命と監督の作家性のための、いわば「やりがい搾取」の構造の中で、美しくも儚く「消費」されてしまった側面があった、と見るのは穿ちすぎでしょうか…？

『青春H』シリーズは、2010年代インディーズ映画の光と影を凝縮した痛々しくも愛おしい巨大な失敗…とまではいかずとも、多少の犠牲とわずかな成果を伴った社会実験とも表現できます。
その挑戦と挫折の軌跡は単なるエロ映画史に留まらない、邦画界が抱える構造的な問題を映し出す、極めて重要な遺産として記憶されるべきだと私は考えます。

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