プロジェクト概要
プロジェクト概説
ロマンポルノ・リブート・プロジェクトとは
1971年に誕生した成人映画専門レーベル・日活ロマンポルノの製作45周年を記念し、発足したプロジェクトのことを指します。
かつての「日活ロマンポルノ」を現代的な視点で蘇らせる試みとして企画はスタートされ、1970年代から80年代にかけて一世を風靡した「日活ロマンポルノ」の精神を受け継ぎつつ、新たな映像表現を取り入れた作品群を生み出すプロジェクトでした。
5名のポルノ映画の撮影経験のない映画監督が、共通のマニュフェストの下で撮影を敢行致しました。
とはいえその5名で勝敗を競わせる訳ではなく、『名監督がポルノを撮ったらどうなるか?』という化学反応を楽しむことが目的となっています。
2016年に企画され、2016年~2017年と年をまたいで劇場とBSスカパーにて本プロジェクトで制作された各作品の公開がされました。
参加監督
園子温
鬼才や異端児といった単語で形容されることが多い映画監督、一言ではとても表現のできない奇抜な作風で一気にスターダムへとのし上がる。
今作のプロジェクト参画について、「ロマンポルノに対して思い入れがあるわけではなく、懐古趣味で映画を撮るのは嫌だったので一度は断った。アンチポルノだったら撮れる、と口にしたらそれでもいいということになった」とインタビューで語っており、日活側から提案したマニュフェストも厳格に守らず、好き勝手撮影を行っているので特別枠としての参加に近い。
監督代表作:うつしみ、恋の罪、Strange Circus 奇妙なサーカス
中田秀夫
ホラー作品を監督をきっかけに名を馳せるが、実際はメロドラマ志向の監督。
にっかつ撮影所に入社し、助監督などで一部の作品に携わった経験がアリ。
監督代表作:リング、スマホを落としただけなのに、仄暗い水の底から
行定勲
映画監督で数々の映画賞を総ナメするなど輝かしい実績の他、テレビCMやミュージックビデオの演出などマルチな才能を発揮する日本を代表する映画監督。
監督代表作:OPEN HOUSE、リバーズ・エッジ、世界の中心で愛をさけぶ
白石和彌
ヤクザや半グレなどのアウトローの世界を描写することに定評のある映画監督。
監督代表作:凶悪、孤狼の血、日本で一番悪い奴ら
塩田明彦
それなりに実績のある監督ですが、錚々たるメンバーが名乗りを上げた本プロジェクトでは少し見劣りしてしまいがち…
そんなちょっと可哀そうな監督でもあります笑
監督代表作:月光の囁き、黄泉がえり、どろろ
マニュフェストについて
上映時間80分程度
それぞれの作品の本編時間は以下となっています。
ジムノペディに乱れる:83分
風に濡れた女:77分
牝猫たち:85分
アンチポルノ:101分
ホワイトリリー:80分
映画撮影期間は1週間、映画制作費は全作品一律
時間やお金をかければ、相対的に良い作品が出来るに決まっています。
あえて当時のポルノ映画と近い条件下で撮影することを目的としているんでしょう。
といっても、制作費も撮影期間もブラックボックスなので、厳格に守られていたかは不明ですが…。
10分に一度の濡れ場
これも目安であって、要するにメインである濡れ場を疎かにするなよという日活側の念押しだったんでしょうね。
完全オリジナル作品
むしろ制約で雁字搦めのプロジェクトだったので、オリジナルにしなきゃ成立しないと思います。
日活ロマンポルノ初監督
先述した通り、ポルノ映画の撮影経験のない監督が今回の選考基準となっています。
まぁ中にはオリジナルビデオ等で成人映画に準ずる作品の監督経験のある方や、にっかつ映画の助監督や美術助手といったかたちで、過去に携わっていた方もいたりしたみたいです。
ジムノペディに乱れる
ヌードシーン集
風に濡れた女
ヌードシーン集
牝猫たち
作品名 | 牝猫たち |
公開日 | 2017年1月14日 |
監督 | 白石和彌 |
出演 | 井端珠里、真上さつき、美知枝、郭智博、松永拓野、吉村界人、吉澤健、村田秀亮、久保田和靖、白川和子、米村亮太朗、ウダタカキ、野中隆光、音尾琢真、山咲美花、天馬ハル |
ヌードシーン集
アンチポルノ
作品名 | アンチポルノ |
公開日 | 2017年1月28日 |
監督 | 園子温 |
出演 | 冨手麻妙、筒井真理子、不二子、小谷早弥花、吉牟田眞奈、麻美、下村愛、福田愛美、貴山侑哉、長谷川大、池田ひらり、沙紀、小橋秀行、河屋秀俊、坂東工、内野智 |
ヌードシーン集
ホワイトリリー
ヌードシーン集
まとめ
どの監督もマニフェストの制限、特に「10分に一度の濡れ場」というルールにとらわれすぎていましたね。
その結果、監督ごとの演出の強みや個性が発揮されず、作品の質が低下。
世間の評価も芳しくなく、駄作ばかりが量産されてしまいました。
その背景には、監督陣のネームバリューが強すぎたことも影響しているでしょう。
観る側が「一般映画」として期待してしまい、本来の目的である「ヌードや性描写を楽しむための成人映画・ポルノ映画」として適切に受け取られなかった印象があります。
また、プロジェクトの方針がライトな映画視聴者層にまで十分に伝わらなかったことも、大きな要因でしょう。
加えて、一般の人が持っている「日活ロマンポルノ」のイメージと、リブートプロジェクトで発表された作品の内容があまりにも乖離していたことも、駄作と評される一因です。
ロマンポルノという枠組みを置いておくとしても、単純にヌードを楽しむコンテンツとしても今ひとつの出来栄えであり、結果として「企画倒れ」と言わざるを得ない状況になってしまいました。
このプロジェクトを通して、日活ロマンポルノというコンテンツそのものが、もはや現代の世相に合わないことが露呈してしまったのは、何とも皮肉な話です。
「リブート=新たな再出発」のはずが、その後、日活ロマンポルノが本格的に再始動する気配すらないことが、その証拠でしょう。
ロマンポルノの再起は潰え、参加した監督や女優たちは“黒歴史”を作る結果となってしまいました。
そんな中、唯一成功したと言えるのが園子温監督です。しかし、それも作品の評価というより、「若手女優によるヘアヌード解禁」が話題になったことが大きかったのではないでしょうか。
実際、このプロジェクト自体を知らなくても、『アンチポルノ』が“ロマンポルノ唯一のヘアヌード解禁作”であることは、比較的有名です。
今後、もし再びこうした試みを行うのであれば、中途半端な制約を設けるのではなく、「ヘアヌード映画のナンバーワンを決めるプロジェクト」を発足してほしいものです。